以前から鑑賞しはじめたロミオの青い空。
今回は故郷の村からミラノへと旅立つ道中、そして【アルフレド】との出会いを描いたいわば導入部分。
物語の主柱と言えばロミオにとっての運命の相手とも言えるアルフレドとの接触だが、その裏で展開される細やかな物語もある。
それは【死神ルイニ】の心境を巡るもの。
【死神】と呼ばれるルイニは、生活に困窮した家庭の子供を買い、ミラノで煙突掃除婦として働かせるべく人身売買を行っている男。その手口から人々から死神と呼ばれている。
煙突というモノはその性質上、大人の男では中に入ることが叶わず、また煤や熱などにやり肉体的な負担が大きいため、こういった子供たちの仕事としてある意味ポピュラーなものだった。
ロミオのその為にルイニに買われたのだが‥‥嵐のマジョーレ湖を渡る描写が、ストーリーで存在する。それは人身売買を行っているルイニがあわや新聞記者にすっぱ抜かれようとされる手前の話で、その中で焦り荒れ狂う真夜中の湖を強行軍しようとするルイニの様子からも、いかに【ヤバイ】仕事に手をだしているのか、という事が予想できよう。
そしてその中で、ロミオやアルフレド、ルイニを乗せた船が大波にのまれて転覆。泳げるロミオはアルフレドを助け出し、岸を目指そうとするが‥‥そこで、頭を打って意識を失っているルイニが湖に飲まれそうなっているのを発見するのだ。
ここまで読んだ方なら予想がつくだろうけれど、ロミオはルイニを助け出す。いくら死神といわれ、暴力をふるわれようとも。
その理由は‥‥【どんな時でも、人にやさしく出来る強さを持っている人こそ、英雄なのだ】と言う父の言葉に従ったのだという。
この事実はルイニに細やかな変化を与える。
それは、例えば盗んだ馬車に対価以上の代金を(やさぐれながらも)支払ったことかもしれない。
ロミオを殴るべく振り上げた手を、振り下ろせなかったことかもしれない。
想像するに、ルイニが育った環境というのは相当ひどいものだったのだろう。彼がロミオたちに簡単に手をあげるのは、彼がそう育てられたからかもしれない。
危ない橋を渡り続ける仕事をし続けるのは、そうするしか生きる道がないからかもしれない。
とにかく、ルイニにとっては【憎む相手を命がけで助ける】と言う行為は、彼にとっては何よりも信じがたい行動であった。そのせいあろう、洞穴で目覚めた時、彼は自分の手をじっと見つめる。命がある、と言う事実が信じられないと言った目で。
けれど、ルイニが命を助けられた事実は変わらない。信じられない出来事が自分の命を救った事実は、彼の心に僅かな弾力を生み、細やかな変化を生み出したのだ。
この点は物語ではほとんど語られず、またルイニ自体もここで登場が終わるキャラではある。けれど、これはある種で最序盤のハイライトではないだろうか。
こんなサブキャラとのやり取りですら、その背景を浮かばせてくれる深み。素晴らしい。
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